本多流七道

(昭和七年師範会制定 ※旧仮名遣いは現代仮名遣いに改めています)

一、足踏
一、 左右両足の拇指の先は的に向かって約一直線にあること
二、 両足先の拇指の間隔は身長の約五割二分位を基準とす
三、 両足の角度は約六十度(内側)とす
 
二、胴造
一、 身体の重みを両足に托し左右肩を落とすこと
二、 上体は稍前かがりとなること
三、 両脚はひかがみを伸ばし両足裏は大地にぴったり着く様に力を入れること
四、 静かなゆるやかな気持ちになり腹の力が抜けぬ様にすること
 
三、弓構
一、 弓を左の内膝節に立て左右の拳を揃え体の正面にてなすこと
二、 打起の前に顔を的に向けること
「手の内」「会」参照
 
四、打起
一、 打起は約四十五度に打ち起こすこと
二、 両肩が上がらぬようにし精神を落ちつけ臍下丹田に気を収めること
 
五、引取
一、 打起の位置から左手を左斜に動かし左肘の上辺に的を見る所まで持って行き右手は肘から先だけを左に動かして右肘が直角位に曲がり肘の位置は打起の時よりもすこし高くなって頭に近づけて拳は眉毛より下らぬ様にして左右の拳をほぼ平らにすることこれを大三(中力)と云う
二、 この時矢束は引く矢束の三分の一即ち自分の矢束の約半分以上になるべきこと
三、 次に引取の第二動に移る左手は弓を押し右手は肘を後ろに廻し身体が弓と弦との間に割り込むようにして矢束を十分に引くこと
 
六、會(会)
一、 引取が完了したる所を會と云う
二、 この時矢は耳の下より口割までの間にして頬に接すべきこと
三、 弓は身体と一致するように稍伏せること
四、 會の形が整うと同時に狙いも定まるべき右眼を主として弓の内側(左側)より的の真を狙うべし拳と的との高低は弓の強弱的の遠近によって異なる。狙いは人に依って異なるものであるが人に後方から見て貰って的について居る時の自分の狙いをよしとするその正しい顔の向け方を必要とす
五、 會に入ると左右両手の運動は制止するがこれは終局の制止ではなく次に来る離れの為の準備であって左右の手左右の肩胸等が縮んだり緩んだりする事の無い様に努力すること之を伸合と云う
 
七、離
一、 離をなすには左手の親指をしめて中指に押しかけこれと共に右手の親指を強くはね無名指と分離せしめるのである
二、 右肘の部分の開いた角度は約百度位を基準とす初心者はなるべく大きくすること
三、 離は強くして軽きことが肝要である
四、 會の時の全身の気力充溢の余韻が離の後に存在すべきで之を残身という。
 
「手の内」「會」
手の内は左手の取懸け會は右手の取懸と思い共に弓構の場合に行うべきもの手の内は拇指と中指で弓を握りそれに薬指小指を添へ拇指の腹が中指の第三関節の所に懸け指の間に隙を生ぜぬ様になすこと
中力以後引取にかかっては拇指と人差指との股で弓を正面に押し中指と拇指とで出来た輪の形を以て弓に直角の気持ちで押しかけ拇指の根元で弓の右内側を押しぬくこと之が中押と云って正しい弓の握り方であり押し方である
 
取懸方
弦枕の所に弦を引かけ帽子の頭を薬指の第三関節の所に帽子の先端が外部より少し見ゆる程度に懸け(初心者にして三つ弽の場合は中指の第三関節)人差指と中指とは薬指に準じ軽く添え矢は人差指の中頃の高さにし人差指の根元で外面より軽く矢を支えること中力以後引取りに懸る時は帽子の中の拇指は上にはねる様に力を入れ弓の方へ引かれる弦の力と最小限の力を以て引き来たり弦と會口と矢と一緒の気持ちで拇指をはね起して弦を放ちやること