又射に歩射騎射の二種ありて、素より騎射なるものは射御の両つ連用なせしものにて、素より別に騎射あるに非ず。
然れども後世自然一技の芸たる如き姿なり。歩射の大概を言う時は、前に述べるが如く真行草よりして、
立座・拾段射を始め種々の教あり。騎射に流鏑馬・笠懸・犬追物・其他敵合射様・鞍固め等伝授あり。
射は一技なれども、太古よりの伝夥多にして一朝に言い尽くすべからず。
抑々射の真理たる基本を一篇に述ぶるに、弓は形容言にして曲なり、(ゆがむ)の義にて、矢は(やる)の
義にして、此方より彼方へ(いやる)の義にて貫徹の義を言う。士をさむらいと言うも、(さ)は殺弓の
さにて、(むら)は群の意、(い)は居の義、則ち古への弓矢の貴重なる事、之を以て知るべし。古への
戦闘を(いくさ)と言いしも、五人組にて弓矢を以て隊伍をなしし事を知るべし。斯の如き事は敢えて
射に益なしと雖も、上古無二の重器として尊みし事を知るべし。
斯の如き冗言は置いて、現今壮者の迷惑なす骨法射形の概略を謂わんに、先ず射術の根本たる窮理を知るに
及んでは、自然骨法射形、法の如く意の如くなるべし。之師に従うて学ぶ者は、其の家に至らんとして門に入り
室に至るが如し。自我の射は其屋に至らんとして思わざる所に入るが如し。能々合意有るべし。故に射の業を習う人は、
能き師を求めて学ぶ時は、一月にして骨法を知り、二月にして射形調い、三月にして弓力増し、
四月にして味わいを覚え、五月にして調子を得、六月にして真の中りを知る。然して累年の上妙手を得る也。
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