本多流七道 〜 足踏 |
足踏
〜己が形相應に立つべし 人々の矢束たるべし〜
足踏とは目的即ちめあてに対して右向けをなし、左足をつけ、左足の大指の外方を目的なる的 の中心に一直線になる様に体の位置を定め、右の足を左の足に従ひて大指の内の爪角を右の足の 大指の外かどと見くらべ、的の中心と、左足の大指の外かどと、右足の大指の爪かどと三点一直線に なるように致します。 |
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蜘蛛の規矩 初め目的とする所の物に向ひて、左足の大指の爪先が、目的物の真中と真直である といふことを精神上で思ふ所を定め、足を踏み出し、それから右足を踏み開いて大凡 この位にしたなら矢も的の中心に行くだろふとの見込みをつけます、すると蜘蛛が恰も 目当物に向て糸を、風によりて吹き付けると全く同じ意味なので御座います。 闇夜の規矩 闇夜の規矩とは何かを申すと、所謂闇夜においては目当といふものなく、只声柄とか、 物音とかを聞きて、射止めんとする目的は何れにあるかを聞き定めるので御座います。 左様な時に足踏をするときは、物音によりて足踏をするので、姿が見えませんから、 目で見て足踏をすることが出来ません、故に物音を聞きて、大体目的物の所在を考へて 足踏をするより外はありません、之れ精神の働きによりて定むるところの規矩で御座います。 |
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扇の曲尺 足の恰好は如何かといふに、十軒の扇なれば之を五六開きたるときの其親骨の 恰好を開閉の度合といたします、そこでこれを扇の曲尺と申します。又足踏の 幅は普通に申す所では、自分の引く矢束だけとしてあります、之れは世上一般に 申すことで、何流でもそふ申して居る様で御座います。〜(中略)〜之れも 成程丁度扇の五六軒といふのと其意味全く同じことであります。 力の入れ所は両足の裏を以てしかと地面に密着するようにふみつけます、地から 離れぬ様な心持ちにて力を入るれば、左右の膝は伸びて張れるようになります、 そこで、よしんば頭を抑いて引き上げられても、其足踏のまま引き上げらるる様にし、 其姿勢の崩れぬ様にするのが足踏の規則で御座います、さうすれば膝の折れ際、 ぴんと張る様になると、自然と胴も引っ張れて参ります。 |