本多流七道 〜 離 |
離・残身(残心) 〜離は鸚鵡の離なり〜 | |
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四部の離 四部の離とは四ヶ所にて離るれば宜しいと申すことで御座います。四ヶ所とは所謂左手の拳、右手の 拳、左肩、右肩のことを申します。此四ヶ所で同時に離るれば宜しと申します。 四部に言葉の通う紫部(みべ)と申すことは趣意は変りありません。紫部と申すことは如何いう 訳かといふと、離れを勉強すれば次第に熟達して参ります。色で申しますれば白とか青とかいふもの も熟して参りますれば紫色になります。其紫色なる高尚の離れ口を紫部の離れと申すので御座います。 |
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鸚鵡の離 鸚鵡の離れとは凡て鸚鵡が人の物云ふことを真似することに例へて申すことで、左手に応じた右手の 離れでなければ真の離れと申されません。外見では離れは勝手のみにある様に見えますが、実は離れ は弓手にあるので御座います。之れは他流でも同様で御座います。離れは弓手がすることを右手が 受けて致すので御座います。此事は嘗て申して置いた事で御座います。 雨露利の離 雨露利の離とは字義の通り、雨の雫が追々に木或は草の葉に宿り、露の形となりて落つる具合を 申します。俗に熟柿が独りでに落つる様に似て居ると申しますが、竹林では雨露利の離れと 申します。或る人は又無念無想の離れと申しますが、無念無想では放されますまい。要するに 離れは四部の離といひ、鸚鵡の離といひ、雨露利の離といひ、皆滞りなく各部円満に離れて 行く様に勉めたいのであります。 |
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(此の外「総部の離」「四ヶの離」「六凶の離」の伝あり。此処にては略す。) |